銀行員の異動のお話

銀行員は2〜3年を平均に支店を異動します。
異動にはどんな意味があったか振り返ってみました…
 

 

これから銀行を目指す、若手行員で銀行のなかで評価されたい、出世していきたいと考える人は大きな店舗へ異動していけたほうが有利です。

明らかに小さい支店や田舎の支店にいるより、大きな支店に所属することのほうがメリットは大きいのです。

小さい支店や田舎の支店で地域のために働くという精神は素晴らしいものですが、結局銀行での評価はいくら売った、いくら収益を上げたということの評価が非常に大きいのです。

スルガ銀行の報告ほどまではいかなくでも、銀行員であれば似たような状況はあるなとイメージする人は多いと思います。

 

1.そもそも入行の辞令が銀行員人生を左右する

 

銀行員として就職する初任店はどこだろう、、、

就活が終わり卒業を間近に控える卒業生はドキドキしますよね。

自分はどこ支店か、入行前研修でノリが合った◯◯はどこ支店かなど当然気になります。

 

人事担当として人事異動や役席、管理職への登用、将来の出向状況を銀行でウォッチしてきた身であるため、最初の辞令の持つ意味はよく理解しています。

基本的に、銀行の大規模店(本店、統括店、人口の多い地域の支店)に配属する行員は、銀行からの期待値が大きいです。

 

例えば、

①優秀大学出身者(本店や東京の支店は特に東大、名古屋大、東北大、慶応、早稲田が多い)

②体育会系で一定の大学出身者(銀行が政策的に力を入れる地域(首都圏など)で新規開拓などを期待)

つまり最初に店の状況によって銀行が自分をどう評価しているかがよく分かるということです。

 

初任店の配置は2店舗目以降の異動にも影響を与え、営業成績がすこぶる振るわないことや、何かやらかさなければ継続して同規模の大きさに店に配属されていくことが多いです。

そういったなか、ある程度の規模の支店で活躍をすれば本部異動や海外店への異動にもつながることが多くあります。

仮に初任店が小さい規模であった場合は、歯食いしばり実績を積み重ね別のルートに乗りしかありません。後述していますが、小さい店舗では個人評価も高くつけられにくいものですが、それでも継続して実績を残していけば規模の大きい支店に異動していく行員も多くいました。

またはよく勉強し社内公募で希望だすか、もう見切りをつけ転職してしますことも全然ありだと思います。

 

銀行はよく減点主義であると言いますが、実際そのとおりであると強く感じます。

可もなく不可もなく淡々と仕事をしている行員も、ある程度の規模の支店を異動していくルートに乗っていれば普通に役職も上がっていきます。

これはこれで、銀行での生き方かもしれません。

 

一方で同期最速で出世したり、頭取表彰を受賞したり、早くから本部へいく行員はやはり攻めなければそうはなれません。

攻めて、攻めて営業実績を残し高評価を獲得しますが、攻めに徹するあまり大きな失敗をしてしまうこともあります。それこそせっかくの規模の大きい支店を異動し、支店長コースであった行員が一瞬にしてコースから外れることもあります。

基本的に失敗したものは救済する組織ではありません。トカゲが尻尾を切り離すように、若いうちに成果を残した行員も大きな失敗をすれば見捨ててしまいます。

 こうなってしまった時、いやこうならなくても何かあれば潔く、未練なく銀行をされるよう自身の力をつけ若いうちから外部でも通用するために学ぶ意識をすることが大切です!

私の場合は外部で使える資格や事業承継やM&Aなど融資以外の知識を身につける意識をしてきました。

他でも書きましたが銀行業検定なんて本当にアホらしいので、程よくこなし自分の将来ファーストで行動することをお勧めします!

 

ちなみに私の場合は最初の配属店は統括店でした。 統括店というのは、周辺の数店舗(傘下店)を統括する支店です。 月次で営業成績の報告を受ける、何か本部の掛け声で営業推進運動があればその旗振りを行う、営業推進研修や会議を開催する際には統括店に集合するなど、いわば地域のリーダー支店です。

一方で、リーダー的支店であるからこそ、営業計画は傘下店より高めです。

高い営業計画を達成するため、先輩も実績を残した人や体育会系でイケイケな人が多くいました。学生上がりで大変なことも多かったですが、社会人としての基礎、や金融知識など非常に多くのことを学ぶことができ、いい経験になったと思います。 しかし、営業計画が高い分、上司の詰めは厳しく、それこそ最近にスルガ銀行で発覚したパワハラ的なことはけっこう経験しました。

それこそ、私が1年目の最初の夏には2年目の先輩が上司から詰められ急遽出社しなくなり、休職しそのまま退職していました。本人はかなり大変で追い詰められてしまったと思います。しかし早急に銀行に見切りをつけ、早い段階で転職に進めたことはよかったのでははいかとも思います。

また、2年目の先輩が辞めた際にわかったのですが、3年目の先輩も同じく2年目の時にこの支店で退職をしていたとのことでした。つまりここ最近はこの支店に入行し3年頑張って次の支店に異動していく人はいないというのです。 そしてそのことを半ば自慢げに笑いながら話す上司はマジでやばいやつらだと当時思ったことを思い出します。

約10年前の話ですが、こんな上司が蔓延する組織であるからこそ、銀行から優秀な人材が転職していくのかもしれませんね。笑

 

2.支店の規模が個人成績にも影響!?

銀行では半期ごとに個人の目標(コミット)を定め、期末に実績を確認して評価を受けます。

その評価は夏・冬のボーナスに影響し、長期的には昇格や退職金などにも影響していきます。 この個人成績ですが、表題にもありますよう所属する店の影響を大きく受けます。

つまり、大きな店にいれば個人成績もよくなりがち、小さい店にいると個人が頑張ってもある程度までしか評価されないことが多いということです。

この理由は

①個人の成績は支店の成績がよくないと高くつけにくい

個人でいくら結果を残しても、所属する支店がボロボロでは担当上司と支店長は高い評価をつけにくいということです。

評価ルートは、担当係の上司がまずは評価し、そのあと支店長評価し、最終的に人事で決裁となります。支店数字が悪いと上司は支店長に個人を評価するよう訴えにくく、支店長は人事に自分の部下だけは評価してくれと訴えにくいのです。個人の成績に対してコミットを掲げているので本来はおかしなことですが、銀行という組織には自分の部下のため、上と戦える粋でかっこいい上司は少ないのです。

②小さい支店では顧客数や一件あたりの金額が小さく大きな案件を獲得しにくい

銀行では基本的に支店のテリトリーが決まっているため営業できる範囲も限定的です。 よって人口が少ない地域の支店では、住宅ローンや資産運用の対象となる案件が少ない、企業数が少なく、大きな企業がないなど大きい支店の行員よりも物理的に不利です。

評価をする際は支店の規模を考慮した上で、評価をするよう役席、支店長には示達を出していますが、数字で判断するため獲得数字が大きいほうが高評価となってしまっています。

③規模の大きい支店の支店長は権力が強く小さい支店は新任店長などが多く権力が弱い

小さい支店の支店長は本部や人事にものを言いにくいのです。

融資部へのネゴや本部への営業支援を依頼する場合も小さい支店の支店長は弱腰であることが多く、結果として支店の数字もつきにくいことがあります。

その下で働く部下も当然その煽りを受けてしまいがちです。

 

この結果として銀行内で個人を表彰する頭取表彰には、同じ名前がよく並びます。 一度表彰を獲得すると継続的に名前があがり、新参者はほとんどでてこないのです。

個人が本当に優秀ということもありますが、できる行員は大きい支店を異動していくため、また実績を獲得しやすい環境にあり、どんどん実績を残し表彰を受ける。 小さい支店から小さい支店へと異動を繰り返すと環境的にも評価されにくいため、一向に風向きが変わらず、くすぶったままとなってしまうことが多いのです。 一度このループにはまると抜け出すには相当な努力が必要で、抜け出すことが遅くなればなるほどデメリットがあります。悲しいですがこれが銀行の現実ですね…